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弁膜症
弁膜症について
 弁膜症とは心臓に4つある弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)のいずれかもしくは複数に異変をきたして心臓が悪くなる病気です。弁が狭くなる狭窄症と、閉じにくくなる閉鎖不全症の2種類に分かれます。心雑音がある・弁膜症があるといわれたら、心エコー図検査をうけてください。正確な診断と治療方針の決定をいたします。

<弁膜症とは?>

 心臓に4つある弁(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁)のいずれか、もしくは複数に異変をきたして心臓が悪くなる病気です。

 弁が狭くなる狭窄症と、閉じにくくなる閉鎖不全症の2種類に分かれます。主な弁膜症について解説します。
1. 大動脈弁狭窄症

<大動脈弁狭窄症とは?>

 大動脈弁狭窄症とは左心室の出口にある大動脈弁の動きが悪くなり、広がらなくなってくる病気です。
 そのため左心室に負担がかかり、また、全身に血液を送り出すことができなくなってしまい、様々な症状をおこします。

<症状は?>

 代表的な症状には 1. 胸痛(狭心痛)/ 2. 失神/ 3. 心不全 があります。症状が出現すると平均余命はそれぞれ5年、3年、2年といわれています。

<診断は?>

 聴診で心雑音により大動脈弁狭窄症が疑われたら、心エコー図により診断します。心エコー図で大動脈弁が固くなり開かなくなっている様子が確認できます。治療方針を決定するうえで大切な重症度を診断することもできます。

 心エコー図で大動脈弁通過血流最高速> 4.0 m/s、左室大動脈間平均圧較差> 40mmHg、弁口面積 < 1.0cm2 の場合、重症大動脈弁狭窄症と診断します。

<治療は?>

 大動脈弁狭窄症には3通りの治療があります。
 軽症の場合

 保存的治療となります。特別な治療は必要ありませんが、病気が悪化する場合がありますので、年1回程度は心エコー図を受けていただく必要があります。

 中等症の場合

 他に心疾患がない場合は保存的治療となります。年1回程度の心エコー図検査が必要です。

 重症の場合

 症状がある場合は外科的大動脈弁置換術を行います。症状がなくても大動脈弁狭窄症によって心臓が弱ってきている場合や、重症の程度が強い場合は外科的大動脈弁置換術を行います。高齢(おおむね80歳以上)であったり、他の病気を合併していて外科治療のリスクが高いもしくは不可能と考えられる場合には、外科的大動脈弁置換術の代わりに、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を選択する場合があります。

<奈良県立医科大学付属病院ハートチームの取り組みについて>

 循環器内科、心臓血管外科、放射線科、麻酔科を中心としたハートチームにより、
大動脈弁狭窄症の治療方針を決定しています。
心エコー図により大動脈弁狭窄症の重症度を診断し、治療方針を決定します。必要に応じて経食道心エコー図や心臓カテーテル検査を行う場合もあります。

当院ではこれまで心臓血管外科による外科的大動脈弁置換術(AVR)を行ってきました。2018年4月より、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)が始まり、患者さんの病状に応じた治療を選択できるようになりました。
 TAVIとは?

 従来、大動脈弁狭窄症の手術は開心術による外科的大動脈弁置換術が行われていました。高齢などの理由で手術リスクが高いもしくは不可能な患者さんに対する治療法として、経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が施行可能となりました。

  TAVIには大腿動脈からカテーテルを挿入して行う経大腿アプローチと、心尖部からカテーテルを挿入する経心尖部アプローチ、大動脈から直接アプローチする経大動脈アプローチ、鎖骨下動脈からアプローチする経鎖骨下動脈アプローチがあります。

 大腿アプローチによるTAVI(バルーン拡張型)の手順

1.

大腿動脈から大動脈内を逆行性にカテーテルを進めて、ガイドワイヤーを大動脈弁から左心室に通過させる

2.

バルーンを拡張させて人工弁を留置する

3.

バルーンを抜去するとすぐに人工弁が機能する

 どのような患者さんにTAVIを行うの?

自覚症状(心不全、胸痛、失神)のある重症大動脈弁狭窄症で以下のような方。

・外科的大動脈弁置換術が不可能
・外科的大動脈弁置換術のリスクが高い患者さん


 たとえば、過去に冠動脈バイパス手術を受けている、高齢である(おおむね80歳以上)、虚弱である、肝硬変、重症肺疾患など開心術のリスクが高い患者さんなど、当院では以下のような患者さんには(今のところ)TAVIは実施していません。

・余命1年未満
・透析患者(施設基準を満たした施設で実施可能)
・感染性心内膜炎
・重度の認知症
・弁輪サイズが小さすぎる、大きすぎる
2.僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)

<僧帽弁閉鎖不全症とは?>

 僧帽弁閉鎖不全症とは、左心房と左心室の間にある僧帽弁が様々な原因により閉じなくなり、左心室から左心房に向かって血液が逆流してしまう病気です。出口にある大動脈弁の動きが悪くなり、広がらなくなってくる病気です。そのため、全身に血液を送り出すことができなくなってしまい、様々な症状をおこします。

<症状は?>

主な症状には、動悸や呼吸困難、むくみなどの心不全症状があります。心房細動などの不整脈を合併する場合があります。

<診断は?>

 聴診で心雑音により僧帽弁閉鎖不全症が疑われたら、心エコー図により診断します。心エコー図で僧帽弁が閉じにくくなって、血液が逆流している様子が確認できます。

 また、その結果左心房が拡大したり、肺高血圧をきたしたりする様子もわかります。逆流や肺高血圧の重症度を診断することもできます。

<治療は?>

 僧帽弁閉鎖不全症には4通りの治療があります。

 重症僧帽弁閉鎖不全症で自覚症状があれば手術を行います。
術前検査で可能と判断されれば、自分の弁を温存する外科的僧帽弁形成術を行います。

 僧帽弁形成術が困難と判断された場合人工弁を用いた外科的僧帽弁置換術を行います。症状がなくても心臓が弱っている場合や、心房細動という不整脈や肺高血圧が出現した場合は手術を行います。

 いずれにも当てはまらなくても僧帽弁形成術が可能と判断した場合は手術を行う場合があります。保存的治療を選択した場合でも、6か月ごとに症状や心エコー図検査による評価を続ける必要があります。

<奈良県立医科大学付属病院ハートチームの取り組みについて>

 循環器内科、心臓血管外科、放射線科、麻酔科を中心としたハートチームにより、僧帽弁閉鎖不全症の治療方針を決定しています。心エコー図により、僧帽弁閉鎖不全症の重症度を診断し、治療方針を決定します。手術が必要と判断されれば、経食道心エコー図や心臓カテーテル検査を行います。

 当院ではこれまで心臓血管外科による外科的僧帽弁置換術(MVR)や僧帽弁形成術を行ってきました。2018年4月より、日本でもカテーテル的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)が保険適応となりました。本治療は外科治療のリスクが高くかつ弁の形がカテーテル治療に適した場合にのみ行われます。ただし現在は施設認定を受けたごく一部の病院でのみ行われており、当院でも今後施設認定を取得すべく準備中です。
3.大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)

<大動脈弁閉鎖不全症とは?>

 大動脈閉鎖不全症とは、左心室と大動脈の間にある大動脈弁が様々な原因により閉じなくなり、大動脈から左心室に向かって血液が逆流してしまう病気です。左心室が拡大し、だんだん動きが悪くなり心不全症状がでてきます。突然発症する急性大動脈弁閉鎖不全症と徐々に進行する慢性大動脈弁閉鎖不全症があります。

<症状は?>

 主な症状には、呼吸困難、むくみなどの心不全症状があります。

<診断は?>

 聴診で心雑音により大動脈弁閉鎖不全症が疑われたら、心エコー図により診断します。

  心エコー図で大動脈弁が閉じにくくなって、血液が逆流している様子が確認できます。
また、その結果左心室が拡大したり、左心室の動きが悪くなっている様子もわかります。

 逆流の重症度を診断し、治療方針の参考にします。

<治療は?>

 大動脈弁閉鎖不全症には3通りの治療があります。

<奈良県立医科大学付属病院ハートチームの取り組みについて>

 循環器内科、心臓血管外科、放射線科、麻酔科を中心としたハートチームにより、大動脈弁閉鎖不全症の治療方針を決定しています。心エコー図により、大動脈弁閉鎖不全症の重症度を診断し、治療方針を決定します。手術が必要と判断されれば、経食道心エコー図や心臓カテーテル検査を行います。

 当院では心臓血管外科による外科的大動脈弁置換術(AVR)や大動脈弁形成術を行っています。大動脈弁狭窄症で行われている、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は現時点(2018年6月現在)では、大動脈弁閉鎖不全症に対して行うことはできません。
4. 僧帽弁狭窄症

<僧帽弁狭窄症とは?>

 僧帽弁狭窄症とは、左心房と左心室の間にある僧帽弁が様々な原因により開きにくくなり、左心房がだんだん拡大し、心不全症状がでてきます。

<症状は?>

 主な症状には、動悸、呼吸困難、むくみなどの心不全症状があります。

<診断は?>

 診断は心エコー図により行います。心エコー図で僧帽弁が開きにくくなって、左心房が大きくなっている様子が確認できます。また、肺高血圧の有無も診断できます。

 僧帽弁閉鎖不全症を合併している場合もあります。弁狭窄の重症度と弁の形態、肺高血圧の有無や程度を診断し、治療方針の参考にします。

 重症

 僧帽弁口面積< 1.0cm2、平均圧較> 10mmHg、収縮期肺動脈圧> 50mmHgであれば重症僧帽弁狭窄症と診断します。

 中等症

 僧帽弁口面積< 1.0-1.5cm2、平均圧較差> 5-10 mmHg、収縮期大動脈弁圧30-50mmHgであれば中等症と診断します。

<治療は?>

 僧帽弁狭窄症には3通りの治療があります。

 症状のある中等症以上(僧帽弁口面積< 1.5cm2、平均圧較差> 5mmHg、収縮期肺動脈圧>30mmHg)で、弁の形態がPTMCにむいていればPTMCを行う。ただし、心房内に血栓がある、重症僧帽弁逆流を合併している場合にはPTMCを行うことはできない。

<奈良県立医科大学付属病院ハートチームの取り組みについて>

 循環器内科、心臓血管外科、放射線科、麻酔科を中心としたハートチームにより、僧帽弁狭窄症の治療方針を決定しています。心エコー図により、僧帽弁狭窄症の重症度を診断し、治療方針を決定します。カテーテル治療や外科治療が必要と判断されれば、経食道心エコー図や心臓カテーテル検査を行います。

 当院では循環器内科により、経静脈経カテーテル的僧帽弁交連裂開術(PTMC)を、心臓血管外科により外科的僧帽弁交連裂開術、外科的僧帽弁置換術(MVR)を行っています。
 PTMCとは?
 大腿動脈からカテーテルを挿入し心房中隔を経て僧帽弁をバルーンで拡張する手術です。
局所麻酔下に行うことができます。

参考資料

1.

大倉宏之、吉川純一:大動脈弁狭窄症.循環器疾患最新の治療'96-'97(篠山重威 編)124-128頁(南江堂/1996)

2.

大倉宏之:大動脈弁狭窄. 新目で診る循環器病シリーズ2、
心エコ-図-撮る、診る、読む-(赤石誠編)150-157頁(メジカルビュー社/2005)

3.

大倉宏之:僧帽弁膜症. 今日の治療指針2016年版-わたしはこう治療している 444-446頁(医学書院/2015)

4.

大倉宏之:僧帽弁閉鎖不全症. 循環器疾患 最新の治療 2016-2017. 166-170頁(南江堂/2016)

5.

大倉宏之、吉田清編著:SHDインターベンション治療のための心エコー図マニュアル(メジカルビュー社/2014)

6.

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)、
弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版)

7.

TAVI-web

弁膜症に対する心臓カテーテル検査と治療
 弁膜症の診断は心エコー図で行いますので、カテーテル検査は術前検査としてもしくはカテーテル治療目的で行います。以下の疾患が対象になります。

<僧帽弁狭窄症>

 リウマチ性僧帽弁狭窄症に対する経静脈経カテーテル的僧帽弁交連裂開術(PTMC) を行っています。PTMCとは大腿動脈からカテーテルを挿入し、心房中隔を経て僧帽弁をバルーンで拡張する手術です。局所麻酔下に行うことができます。

 適応は自覚症状のある中等症以上のリウマチ性僧帽弁狭窄症で、形態がPTMCにむいている場合です。左心房内に血栓がある、重症僧帽弁逆流を合併している場合には行うことはできません。

<大動脈弁狭窄症>

1.

バルーン大動脈弁拡張術(BAVまたはPTAV)
外科的大動脈弁置換術(AVR)、もしくは経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が不可能な例に対する治療、またはAVRやTAVIまでのブリッジとして行っています。

2.

経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)
僧帽弁口面積1.0-1.5cm2、平均圧較差5-10 mmHg、収縮期大動脈弁圧30-50mmHgであれば中等症と診断します。

 TAVIの適応

 自覚症状(心不全、胸痛、失神)のある重症大動脈弁狭窄症で以下のような方。

・外科的大動脈弁置換術が不可能
・外科的大動脈弁置換術のリスクが高い患者さん


 たとえば、過去に冠動脈バイパス手術を受けている、高齢である(おおむね80歳以上)、虚弱である、肝硬変、重症肺疾患など開心術のリスクが高い患者さんなど、詳しくはこちらもご参照ください。

当院では以下のような患者さんには(今のところ)TAVIは実施していません。
・余命1年未満
・透析患者(施設基準を満たした施設で実施可能)
・感染性心内膜炎
・重度の認知症

 TAVI弁の種類
 留置するTAVI弁にはウシ心膜でできたバルーン拡張型TAVI弁と、ブタ心膜でできた自己拡張型TAVI弁があります。

 患者さんの全身状態や大動脈弁の構造に合わせて、適切なTAVI弁を選択し留置します。
 TAVIの手順

 TAVIには大腿動脈からカテーテルを挿入して行う、経大腿アプローチと、心尖部からカテーテルを挿入する経心尖部アプローチ、大動脈から直接アプローチする経大動脈アプローチ、鎖骨下動脈からアプローチする経鎖骨下動脈アプローチがあります。

経大腿アプローチによるバルーン拡張型TAVIの手順

1.

人工弁を装着したカテーテルを大腿動脈からガイドワイヤーに沿わせてすすめ大動脈弁まで通過させます

2.

バルーンを拡張させて人工弁を留置する

3.

バルーンを抜去するとすぐに人工弁が新たな弁として機能します

経大腿アプローチによる自己拡張型TAVIの手順

1.

人工弁が折りたたまれたカテーテルを大腿動脈からガイドワイヤーに沿わせてすすめ大動脈弁まで通過させます

2.

自己拡張能力により人工弁を緩徐に広げていきます

3.

フレームごと留置された人工弁が新たな弁として機能します

心筋症に対するカテーテル検査と治療
 心筋症に対しては、冠動脈疾患の有無を確認するために冠動脈造影検査を行います。また、治療可能な二次性心筋症の診断を行うため、心筋生検を行っています。カテーテル治療は肥大型閉塞性心筋症(HOCM)に対して、経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)を行っています。

参考資料

1.

大倉宏之編著:チャートでわかる実践IVUS,OCT & FFR(南江堂/2009年)

2.

大倉宏之、吉田清編著:SHDインターベンション治療のための心エコー図マニュアル(メジカルビュー社/2014年)

3.

吉田清、木村和美、大倉宏之編:心エコー・神経超音波で診る脳梗塞診断マニュアル(南江堂/2013年)

弁膜症、心筋症カテーテル治療件数
 
2018年
2019年
2020年
2021年
2022年
TAVI
8件
29件
27件
36件
42件
BAV
6
6
2
2
2
PTMC
0
0
0
0
2
PTSMA
1
0
1
0
0
TAVI治療成績(2018~2022年)
治療件数
142件
平均年齢
83.2±4.6歳
性別
男性 47件、女性 95件
大腿動脈アプローチ
135件
バルーン拡張型TAVI(Sapien)
113件
自己拡張型TAVI(Evolut)
29件
手技成功率
100%
院内死亡
0%
院内合併症
恒久的ペースメーカ植込み
14件
アクセスルートの合併症
2例
心タンポナーデ
1例
冠動脈閉塞
1例
脳梗塞
1例

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