診療
Treatment contents/results
診療内容・実績
<狭心症>
このような症状が初めてでた場合や、頻度が多くなった場合、症状の強さが増してくるような場合には、「不安定狭心症」という、急性心筋梗塞発症寸前、非常に危険な状態の可能性があります。放っておくと命に関わる非常に重篤な疾患ですので、すぐに循環器内科を受診いただく必要があります。
特に動脈硬化性の場合,そのリスク因子を多く持てばもつほど、その不安定化、イベント発症リスクは高くなります。(肥満、高血圧、高血糖、高脂血症での検討では、リスクがない人と比べ、リスク保有が1つなら5.1倍、2つなら9.7倍、3-4つなら31.3倍になります)
<心筋梗塞>
急性心筋梗塞というのは、冠動脈が突然閉塞し、血流が完全に途絶えた状態です。そのため閉塞した血管が栄養していた範囲の心筋が酸素不足に陥り壊死してしまいます。その影響で心室細動などの致死的不整脈(すぐに治療しないと心肺停止に陥ります)が生じます。また、心筋壊死のために心臓の収縮機能がおとろえ、心臓のポンプとしての機能が十分果たせなくなり、心不全に陥りやすくなります。治療は一刻も早くつまった冠動脈の血流を回復させることであり、救急車を依頼して循環器専門病院を受診いただくことが大切です。
当院は、365日24時間、胸痛ホットラインという専用回線を利用し、集中治療室の医師と救急隊が時間をロスすることなく連携できるシステムを運用しておりますので、症状などから心筋梗塞が疑われるときは、ためらうことなく、救急車を要請ください。
当院で治療を受けられた患者様の9割以上の方は2週間以内に退院し、社会生活にも復帰し、当院、もしくはかかりつけ医のもと外来通院を継続されておられます。
<検査>
当院では、附属病院1階にあるIVRセンター(24番、25番)にて実施しております。安定した狭心症の患者様であれば、ほとんどの方は2泊3日の入院です。(令和5年時点では、緊急を除く予定入院であれば、火曜日と金曜日に検査を実施していますので、月曜日から水曜日まで、もしくは木曜日から土曜日までの入院予定となります。)
2022年度は心臓カテーテル検査は640件で、2023年度は推定690件に増加する見込みです(10月31日までの件数の×1.2で算出)。カテーテル治療においては、2022年度は366件(うち緊急治療168件)で、2023年度は348件(うち緊急治療173件)の見込みです。(※文末の当院治療実績をご参照ください)
直径2-3mmの筒状のカテーテルを動脈内に挿入し冠動脈を造影します。カテーテル挿入部位は左右手首にある橈骨動脈、肘にある上腕動脈、鼡径にある総大腿動脈のいずれかです。局所麻酔で手技を実施するため、検査中は術者とお話いただくことが可能です。どうしても過度の緊張や不安が強い方であれば、ご希望があれば浅鎮静をかけさせていただくことも可能でありますが、症状の早期発見などのためには、ほとんどの患者様は鎮静せず受けていただくことをお願いしています。
下図のようにカテーテルから造影剤を注入することにより、冠動脈が造影され、狭窄病変(細くなっているところ)の確認をします。カテーテル治療が必要かどうか、当院では高度狭窄(血管造影上AHA分類90%狭窄以上)ではない、また術前に十分な虚血証明(症状などの原因となるような心筋血流障害の証拠となる画像診断所見)がない場合には、積極的にプレッシャーワイヤーを用いた冠血流予備量比などの機能的評価を行いながら、カテーテル治療の最適化に努めております。
<治療>
内服薬には血をサラサラにして、血栓などを抑制する抗血小板薬や冠動脈の血流を改善させる冠血管拡張薬、また心筋の仕事量を減らし保護的な働きをするβ遮断薬などがあげられますが、いずれも対症療法であり根治治療ではありませんが、スタチン薬やPCSK9阻害薬などを用いた積極的脂質降下療法(悪玉といわれるLDLコレステロール値を下げる治療)などにより冠動脈粥腫(プラーク)の安定化やプラーク退縮効果も期待できる時代になってきています。
狭心症の根治治療としてカテーテル治療、冠動脈バイパス術があげられます。当院、循環器科では年間800例近い心臓カテーテル検査・治療を行い、昨今のコロナ感染の流行の影響がまだ残っていながらでも、その内約350例の冠動脈形成術(カテーテル治療)を施行しています。急性心筋梗塞の治療の場合は、準備時間の短さからカテーテル治療が優先的に実施されますが、いずれの疾患においても、患者様にとって最高の結果を得るために、心臓血管外科の先生方とはハートチームを組み、ともにベストな治療戦略で臨んでいます。
冠動脈の狭窄・閉塞部位をバルーンで拡張したり、金属製ステントを留置することで、冠動脈形成術を行います。当院では血管内イメージング、特にOCT(光干渉断層撮影)を優先的に使用し、全例で詳細な検討を行いながら治療に臨んでいます。
血管造影や血管内イメージング画像診断の結果、病変が石灰化により非常に硬いようなときには、ダイヤモンドドリルで研磨するロータブレータ(Rotablator)やOrbital Atherectomy System(OAS)、衝撃波により石灰化を粉砕するショックウェーブ(IntraVascular Lithotripsy:IVL)などを用いて、より良好な内腔獲得と良好な血流を得るために特殊な道具を使用します。
また多量の血栓やステント内再狭窄などの場合には、エキシマレーザーカテーテルを当院では実施可能です。ほかにも方向性冠動脈粥腫切除術(Directional Coronary Atherectomy:DCA)、バルーン拡張式冠動脈灌流型血管形成術用カテーテル、血栓吸引カテーテル、遠位塞栓予防デバイスなども用いながら、患者様のベストな結果を目指して治療に臨みます。
ステント治療は日進月歩、常に改良を重ねられており、現在では第3世代(通常よりも非常に薄い)まで登場しており、我々も最新のエビデンスを基に、治療を行っております。ただステント治療においては、ステント血栓症の発症リスクが1%/年と低いながらもあり、かつそれが治療して数年後にも同様であるという問題がありました。近年では、血をサラサラにする抗血小板薬の2剤併用療法を可能であれば1か月という短期間で抗血小板薬1剤のみへ移行していく流れであり、当院でもそのために必要な、ステントの良好な拡張と血管壁への圧着を意識して治療に臨んでおります。
現在はDrug Coated Balloon(DCB)という再狭窄予防のための薬剤をバルーンにコーティングさせ、狭窄病変を十分な拡張の後、薬剤をバルーンで塗布のみしてステントフリーで終了させるような治療戦略も可能な時代となっております。
①左(左前下行枝の高度狭窄)② 真中(ステント留置)③ 右(狭窄の改善)
① 動脈硬化の強い狭窄部分が造影でくびれてうつります(→)
② ワイヤーを冠動脈内へ通してステントをバルーンとともに拡張させます。
③ 狭窄が解除されました。早ければ1時間程度で手技は終了も可能です。
① 左冠動脈の左前下行枝に完全に閉塞した病変を認めます。
② ワイヤーを通過させた後に、血栓吸引カテーテルを用いて、血栓除去を試みます。
(※血管性状によっては実施しない場合もあります)
③ 血栓吸引に成功し血流回復させると、プラーク破裂を起こした痕跡像(黒矢印)を認めます。
④ 病変部をすべてカバーしてステントを留置し、閉塞した血管の内腔を取り戻します。
⑤※
図)当院で実施可能なさまざまな治療デバイス
① ロータブレータ ② OAS ③ エキシマレーザー ④ ショックウェーブ
⑤ ロータブレータによるプラーク修飾(動画) ⑥ DCAによるプラーク切除
<ステントの種類>
そのステントによる弊害の1つにステント血栓症があります。これは非常にまれながら、ステント留置後数年経ったとしても年間1%程度で生じると言われる致命的な合併症になります。その予防のために、これらのステントを留置された患者様には、抗血小板薬という血をサラサラにする薬2種類(アスピリンに加えクロピドグレル、もしくはプラスグレル)を、最低1か月(出血しやすい背景などのない患者様はできれば1年間)継続いただく必要があります。
それらの問題を解決すべく、次世代には金属を残さない溶けるステントが今後の課題であります。過去に発売された生体吸収性薬剤溶出スキャフォールドは、まだ技術的改善の余地があり、現在もまだ開発中になりますが、期待されるステントになります。
<肥大型心筋症>
非閉塞性肥大型心筋症の患者は比較的症状に乏しく予後は良好な疾患ですが、不整脈などが原因で突然死を来すことがあります。閉塞性肥大型心筋症の患者は左室流出路狭窄のために、血液がスムーズに全身へ送り出せなくなり、労作時などに胸痛、呼吸困難感など、狭心症とよく似た症状を認め、突然死の原因になることがあります。
<治療>
閉塞性肥大型心筋症の患者では胸痛や呼吸困難感などの症状のある場合や圧較差の大きい場合には薬物療法に加え、ペーシング療法、外科的治療(肥大中隔筋切除)、カテーテル治療(エタノールを用いた経皮的中隔心筋焼灼術)があり、左室流出路狭窄を軽減することが治療の中心になります。当院では閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル治療(経皮的中隔心筋焼灼術)を行っております。
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